第59回気象予報士試験一般問6
北半球中緯度にある平坦な地域において、一定の気圧間隔で描かれた地上の等圧線の分布が、図のように東西に一様で北にいくほど間隔が狭くなっており、相対渦度の鉛直成分が図の範囲でどこでも正になっているとする。このとき地上付近の空気塊に働くコリオリ力の向きを示す矢印として適切なものを、図の①〜⑤の中から1つ選べ。ただし、コリオリパラメータは一定とし、空気塊に働く水平方向の力は気圧傾度力、コリオリ力、摩擦力のみで、摩擦力の大きさは風速に比例し、その向きは風向と反対の向きに働くとする。

① 

求めるのは「地上付近のコリオリ力の向き」。
問題で与えられた条件は
- 北半球である
- 地上の等圧線である
- 等圧線の分布が東西に一様
- 等圧線の間隔は北へいくほど狭い
- 図のどこでも相対渦度の鉛直成分が正(反時計回りの渦があるということです)
- コリオリパラメータ(惑星渦度)は一定(緯度が同じという意味です)
- 空気塊に働く水平方向の力は気圧傾度力、コリオリ力、摩擦力のみ
- 摩擦力は風向と反対の向きに働く
ここからわかることは・・・
- 北半球である→コリオリ力は風向の直角右向き
- 等圧線の分布が東西に一様→地上風はおおむね北東または南西
- 等圧線の間隔は北へいくほど狭い→北へいくほど風速が大きい
- 図のどこでも相対渦度の鉛直成分が正→東寄りの風→北へいくほど気圧が高い(※補足あり)
「図のどこでも相対渦度の鉛直成分が正」というのは、ざっくり以下のような地衡風があるはずです。

この問題では「等圧線の間隔は北へいくほど狭い」→「北へいくほど風速が大きい」ということなので、地衡風の風向はこっちですね。↓

だから「東寄りの風」となります。
さらに、地衡風が東から西に吹くということは、気圧傾度力は北から南に向かっており、「北へいくほど気圧が高い」ことがわかります。

もし地上付近ではなく、上層の風だったら、風は等圧線に平行な地衡風なんだけど・・・

地上付近なので、上記の図に摩擦力が加わります。(問題文中にもありますね。)
すると、摩擦力のぶんだけ、風速が減少します。
そして風速の減少に伴い、コリオリ力も減少します。
すると、気圧傾度力とのバランスが崩れて(変わって)、風向が等圧線に平行ではなくなります。

というわけで、答えは①ですね

そもそも渦度とは?
渦度には、相対渦度、惑星渦度、絶対渦度がありますが、これらは異なる視点から捉えた渦度です。
まさにその通りです!「同じ1つの現象を、どの視点(カメラ)で切り取るか」という違いだけです。
この3つの渦度は、独立した別々の渦が3つあるのではなく、視点を変えることで見えてくる「3つの側面」にすぎません。
この「視点の違い」を、改めて1枚の分かりやすい絵のように整理します。
👁️ 3つの異なる視点
- 1. 相対渦度 =「地球の上の『アリ』の視点」
地球と一緒に回っている私たちが、目の前の空気の動き(流れの曲がりや速度差)だけを測ったものです。(天気図で扱う渦度) - 2. 惑星渦度 =「その『場所(緯度)』の視点」
空気が止まっていても、地球の球体としての自転のせいで、その場所自体が足元からどれだけクルクル回っているかを測ったものです。(これがコリオリパラメータ) - 3. 絶対渦度 =「宇宙に浮かぶ『神様』の視点」
地球の自転も空気の動きもすべてひっくるめて、宇宙空間(静止した座標系)から見た「本当の回転の合計」を測ったものです。
上記の3つの渦度は以下の関係にあります。
絶対渦度 = 相対渦度 + 惑星渦度
🌀 相対渦度
相対渦度の本質を分かりやすく3つのステップで解説します。
🌀 1. 渦度とは「ミクロな回転」
川全体の大きな渦だけでなく、流体のあらゆる場所に「目に見えない極小のコマ」が浮いていると想像してください。
- 流体が回転している = コマがその場でクルクル回る(渦度がある)
- 流体がまっすぐ進む = コマは回らずに移動する(渦度はゼロ)
つまり、ある地点の流体がどれだけ激しく自転しているかを表す指標が渦度です。
🚣 2. 身近な例:ボートのパドル
まっすぐ流れる川に、1本のパドル(オール)を上から水面に落としたとします。(細長いものならなんでもOK)
- 川の中央部:どこも流速が同じ。パドルは回転せずに、そのまままっすぐ下流へ流れます。(渦度=ゼロ)
- 川の岸に近い場所:岸に近い方は遅く、中央に近い方は速く流れます。この速度の差によって、パドルはクルクルと回転しながら流されます。(渦度=大)
このように、全体の流れがまっすぐでも、場所による「速度のズレ(せん断)」があると渦度(回転)が生まれます。
🌏 惑星渦度(地球の自転による渦)
意味:空気が全く動いていなくても、地球自体が回っているために最初から持っている渦です。
イメージ:北極点にまっすぐな板を立てると、地球の自転と一緒に24時間で1回転(自転)します。この「地球の台座ごと回る回転」のことです。
特徴:北極・南極で最も強く、赤道ではゼロになります。
👁️ 絶対渦度(宇宙から見た本当の渦)
意味:宇宙空間(静止した視点)から地球を見たときの、空気の「本当の回転の合計」です。
例え:回るコーヒーカップ(惑星渦度)に乗りながら、自分自身もその場でクルクル回る(相対渦度)と、外から見たら激しく回転して見えます。これが絶対渦度です。
外力が加わらなければ、絶対渦度は保存されます。
🧩 なぜわざわざ視点を分けるのか?
物理学でこれらを分けて扱うのは、「神様の視点(絶対渦度)で見ると、物理の法則がシンプルに成り立つから」です。
地球の上(アリの視点)だけで見ていると、空気の渦(相対渦度)は、外から誰も力を加えていないのに、北に動くだけで勝手に時計回りに変わったりして、一見するとワケのわからない動きをします。
しかし、宇宙(神様の視点)から見れば、「なーんだ、足元のアイスの棒(惑星渦度)の回転が強くなった分、全体の合計(絶対渦度)を保つために、空気の渦(相対渦度)が引き算されて逆回転になっただけか」と、すべての辻褄が完璧に合います。
このように、「アリの視点」で見える不思議な現象を、「神様の視点」に持ち込んでシンプルに解き明かすために、この3つの視点(渦度)が必要になるのです。
渦度の他の問題
第59回気象予報士試験学科一般・問7
絶対渦度の保存について述べた次の文章の空欄(a)〜(c)に入る数値及び語句の組み合わせとして適切なものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。ただし、渦度はその鉛直成分を指し、緯度φにある空気塊の地球の自転による渦度は 1.46 × 10-4sinφ /s、sin30°=0.5である。
一般に、地球上の空気塊の絶対渦度は、地球の自転による渦度と相対渦度の和で表され、粘性や水平収束・発散がなければ近似的に保存される。北極点にある10km四方の領域内の空気塊を考え、その周りの風の分布が図のように与えられているとする。この領域の中では空気塊の相対渦度が一様とすると、空気塊の相対渦度は(a)である。また、この空気塊が絶対渦度を保存したまま北緯30°まで南下したとき、空気塊の相対渦度は約(b)とする。すなわち空気塊の相対渦度は北緯30°に南下すると(c)ことがわかる。


④ (a)2.0 × 10-4/s,(b)2.7 × 10-4/s,(c)強まる

絶対渦度とは、惑星渦度と相対渦度を足したものです。
絶対渦度は以下の条件が成り立つ世界で保存されます。(絶対渦度保存則)
- 摩擦がないこと(自由大気)
- 二次元的(水平方向)な運動であり、空気の収束・発散がないこと(鉛直運動がない)
上記の条件を満たす大気を、「順圧大気」と呼びます。
問題文の意味を理解していきます。
絶対渦度の保存について述べた次の文章の空欄(a)〜(c)に入る数値及び語句の組み合わせとして適切なものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。
「絶対渦度の保存」は、「絶対渦度保存則」のことです。
ただし、渦度はその鉛直成分を指し、緯度φにある空気塊の地球の自転による渦度は 1.46 × 10-4sinφ /s、sin30°=0.5である。
渦度はその鉛直成分を指し・・・これは相対渦度のことです。
「渦度の鉛直成分」というのは、「地面に対して垂直(鉛直方向)な軸」を中心に、水平面内でグルグル回る渦の強さを指します。
緯度φにある空気塊の地球の自転による渦度・・・これは惑星渦度のことです。
一般に、地球上の空気塊の絶対渦度は、地球の自転による渦度と相対渦度の和で表され、粘性や水平収束・発散がなければ近似的に保存される。
絶対渦度保存則ですね。
北極点にある10km四方の領域内の空気塊を考え、その周りの風の分布が図のように与えられているとする。
北極点を中心とした10km四方の領域を、思い浮かべます。
この領域の中では空気塊の相対渦度が一様とすると、空気塊の相対渦度は(a)である。
選択肢は、1.0 × 10-4/s または 2.0 × 10-4/s 。
渦度の方程式を使います。
渦度の方程式はこれ。↓


普通にややこしいですね。
なので、渦度の計算は、以下の図を使うと簡単です。

全ての矢印が、反時計回りになっていることがポイントです。
この反時計回りを正の値とします。
もしベクトルが逆向きだったら、負の値として計算します。
では問題の図から計算しましょう。

縦横の距離は同じなので、分母は無視します。
(0.5 + 0.5)+( 0.5 + 0.5 )= 1.0 + 1.0 = 2.0
よって(a)は 「 2.0 × 10-4/s 」
また、この空気塊が絶対渦度を保存したまま北緯30°まで南下したとき、空気塊の相対渦度は約(b)とする。
絶対渦度が保存されたまま、惑星渦度が減少するので、相対渦度は増えますが・・・どれくらい増えるのかを惑星渦度の式に代入して計算します。
問題文より、 1.46 × 10-4sinφ /s、sin30°=0.5
- 北極点では・・・1.46 × 10-4sinφ /s = 1.46 × 10-4/s
- 北緯30°では・・・1.46 × 10-4sinφ /s = 0.73 × 10-4 /s
絶対渦度は保存されるので・・・
北極での(惑星渦度+相対渦度)= 緯度30°での(惑星渦度+相対渦度)
求めるのは北緯30°まで南下したとき、空気塊の相対渦度なので、式を変形します。
北極での(惑星渦度+相対渦度)= 緯度30°での(惑星渦度+相対渦度)
緯度30°での相対渦度= 北極での(惑星渦度+相対渦度)ー 緯度30°での惑星渦度
= (1.46 × 10-4/s + 2.0 × 10-4/s )ー 0.73 × 10-4 /s
=( 1.46 + 2.0 ー 0.73 )× 10-4/s
= 2.73 × 10-4/s
選択肢は、2.7 × 10-4/s または 2.9 × 10-4/s
この時点で選択肢は4しかありません。
すなわち空気塊の相対渦度は北緯30°に南下すると(c)ことがわかる。
選択肢は「強まる」「弱まる」。前述のとおり「強まる」です。
第58回気象予報士試験学科一般・問7
大気中に図(左)のような高さが1km、東西および南北方向の長さが10kmで、4つの側面がそれぞれ東西南北を向いた立方体の領域があり、上面からは下向きに1m/sの鉛直流が、また東西南北の各側面には図(右)の( ) に示す東向きを正とする東西成分、北向きを正とする南北成分の水平風が、いずれも各面に一様に吹いている。
この領域の底面で一様に吹いていると仮定した場合の鉛直流の向き及び大きさと、領域で平均した渦度の鉛直成分の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。
ただし、空気の密度は一定であり、渦度の鉛直成分は上向きを正とする。


⑤ 底面の鉛直流:下向き 0.8m/s
渦度の鉛直成分: -5 × 10-4/s
底面の鉛直流
上面の鉛直流と水平面の風から、底面の鉛直流は下向きだとわかる。
立方体の上から入ってくるの空気が・・・
1m/s × 100km2 = 100 ( m/s × km2 )
立方体の水平方向から入ってくる空気が・・・
+ ( 1 m/s × 10km2 ) × 2 – ( 2 m/s × 10 km2 ) × 2
= 20 ( m/s × km2 ) – 40 ( m/s × km2 )
= – 20 ( m/s × km2 )

水平方向の空気は、出ていく空気のほうが多いことがわかります。
【立方体の上から入ってくるの空気】+【立方体の水平方向から出ていく空気】
= 100 ( m/s × km2 ) – 20 ( m/s × km2 )
= 80 ( m/s × km2 )
合計して入ってくる空気のほうが多いので、底面の鉛直流は下向きです。
そして上記の値を底面積で割ると・・・
80 ( m/s × km2 ) / 100 km2
= 0.8 m/s

よって、①②③は除外。

渦度の鉛直成分
渦度の鉛直成分を求めます。



= ー 5 × 10ー4/s

答えは⑤ですね。

第63回気象予報士試験学科一般・問6
図のように北半球の同じ緯度の水平面上に●で示す3つの点A、B、Cがあり、各点から東西南北に 1km離れた4点で、矢印で示す水平風の風ベクトルが観測された。
4点に付した( )内の数値は(東向きを正とする風の東西成分[m/s]、北向きを正とする風の南北成分[m/s])である。
点A、B、Cにおける渦度の鈴直成分を東西南北の4点の水平風を用いて近似計算した値をそれぞれζA、ζB、ζCとするとき、これらの大小関係を表す式として正しいものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。

( )内の数値は、例えば( – 3,1)は、風の東向き成分が – 3m/sすなわち西向き成分が 3m/s、北向き成分が 1m/sであることを示す。


ではA,B,Cの渦度の計算をしちゃいましょう。
試験問題では親切にも分母が共通なので、省略します。


A:{ 5 + (– 5 )} + {( – 2 ) + 2 } = 0 + 0 = 0
B:{ 5 + ( – 1 )} + ( 3 + 2 ) = 4 + 5 = 9
C:{ 1 + ( – 1 )} + ( 3 + 1) = 0 + 4 = 4
上記より、値が小さい順に A < C < B なので答えは②!
