局地モデル(LFM)の格子間隔変更

変更点と目的

気象庁が運用する「局地モデル(LFM)」の格子間隔は、2026年3月17日から従来の2kmから1kmへと高解像度化されました

この改良にはスーパーコンピュータ「富岳」などが活用されており、主な変更点と目的は以下の通りです。

  • 積乱雲の表現力向上: 格子間隔を細かくすることで、線状降水帯などの集中豪雨をもたらす積乱雲をより詳細にシミュレーションできるようになりました。
  • 予測精度の改善: 地形をより正確に再現し、気温や風の急変、局地的な大雨の予測精度が向上しています。
  • 関連システムの開始: 1kmモデルへの移行に合わせ、豪雨の発生を確率的に予測する「局地アンサンブル予報システム(LEPS)」の運用も2026年3月18日から開始されています。

なお、これまで使われていた2km格子のデータについては、利用者のシステム移行を考慮し、約2年間の並行提供期間が設けられています。

表現できる水平スケール

以前は格子間隔が2kmだったので、個々の積乱雲などを直接表現することはできないということでしたが、水平スケールが5kmからになったことで、個々の積乱雲などは直接表現できるのか・・・

答えは、「完全に直接表現できる」と言うには、まだ一歩手前という絶妙なラインです。

気象学的な視点で整理すると、以下のようになります。

1. 個々の積乱雲は「見え始めてきた」段階

一般的な積乱雲の水平スケールは数km〜10km程度です。

  • 2km格子(解像スケール10km〜): 積乱雲は格子の隙間に埋もれてしまい、単体としては表現できませんでした。そのため、統計的に「この格子内にはこれくらい雲が発生するはずだ」と計算する手法(対流パラメタリゼーション)に頼っていました。
  • 1km格子(解像スケール5km〜): 大きめの積乱雲であれば、ようやくその構造をモデルが自力で描き出せる(直接表現できる)ようになります。これを専門用語で「対流許容」モデルと呼びます。

2. まだ「難しい」と言われる理由

積乱雲の中には、もっと小さな「上昇気流の芯(1km未満)」や、発生初期の小さな雲もたくさんあります。

  • 解像度の限界: 1km格子では、5kmより小さな渦や雲の細かな動きはまだ計算しきれず、不自然に大きな雲として表現されてしまう「解像度の谷(グレーゾーン)」という問題が残ります。
  • 直接表現の定義: 本当の意味で積乱雲を「直接表現(対流解像)」するには、格子間隔を100m〜250m程度まで細かくする必要があるというのが現在の定説です。

結論

今回の1km化は、積乱雲を「ぼんやりした塊」から「個々の雨柱」として捉え始める大きな一歩ですが、その中身(雲粒の動きや細かな気流)まで完璧に描くには、まだ少し解像度が足りない……という状態です。

この1km化によって、これまで捉えきれなかった「線状降水帯」の種となる雲の並びなどは、以前より格段に見えやすくなると期待されています。

予報時刻

初期値は、1日24回(1時間ごと)で、

  • 18時間予報は 00, 03, 06, 09, 12, 15, 18, 21UTC(1日8回)
  • 10時間予報は上記以外の正時(1日16回)

予報間隔は、「地上面は30分間隔、気圧面は1時間間隔」

改めてまとめると、以下のようになります。

  1. 初期値(計算スタート):1時間ごと(1日24回
  2. 予報時間(どこまで先を見るか)
    • 3時間おき(00, 03… UTC)にスタートする回は、18時間先まで。
    • それ以外の時間にスタートする回は、10時間先まで。
  3. 予報間隔(何分刻みのデータか)
    • 地上面30分刻み(10時間予報なら20個、18時間予報なら36個のデータが出る)
    • 気圧面1時間刻み(10時間予報なら10個、18時間予報なら18個のデータが出る)

なぜこんなに複雑なのか?

これこそが「富岳」を使い倒している現場のリアルです。

  • 18時間予報(3時間おき):少し先の将来まで見越して、大雨の準備や予測の連続性を保つための「長距離走」。
  • 10時間予報(毎時):とにかく今起きている「局地的な雨」に特化した、鮮度重視の「短距離走」。
  • 地上面30分間隔:雨の降り始めや気温の急変は30分単位で知りたいという「ニーズへの対応」。

「格子間隔1km」という空間の細かさに加え、この「地上30分間隔」という時間の細かさが組み合わさることで、ようやく「パラメタリゼーションからの卒業」が実務レベルで意味をなしてくるわけです。

引用資料